狙われし姫巫女と半妖の守護者
学校にも来ていたから忘れがちだったけれど、そう、彼は立派な大人だったのだ。
でも、突然とっても大人っぽいところを見せられて、なぜか気恥かしく足の指先まで強張って緊張してしまう。
でも、隣でした衣ずれの音に、不思議と空気が変わった気がして、すぐ彼へ釘づけになった。
彼の目は切なげに揺れながら、ハナミズキの木の向こうのなんにもない暗い空を静かに見据えていた。
きっと、烏天狗の城がある方向……。
「いつ、戦の火蓋が切って落とされるかわかんねえんだから、その前に夢見て酔っておきたいんだ」
私は視線を落とす。
胸にまた、重い石がつまっていくようだ。
ちょうど彼の手がとっくりへとのびようとしていた。
だから私はそっと身を乗り出してそれを取る。
「私、つぐよ……」
無理と聞こえなかったふりして、その話を切った。
縁側に置かれた小さなおちょこに注ぐのに、手元がぶれてこぼしそうになる。