狙われし姫巫女と半妖の守護者
紫希にまで聞こえてしまうほど心臓が早鐘を打つ。
でもその瞬間、私の肩に重みがのしかかった。
耳元で弱々しい息遣いが聞こえる。
「ちっとも、酔ってない……。酔えた方が、よっぽどいい」
私ははっとして、抗っていた手を下ろした。
息をするのも苦しそうな、泣きだしそうな声だった。
「なあ、戦が怖いか? 自分の町に今にも帰りたいか?」
怯える子供のように弱々しい声で問いかけてくる紫希。
私は、冷たかった手までもあたためてしまう彼の胸の中で、わずかに横へ首を振った。
「怖いけど、帰れないよ。私は守るためにここへ来たんだもん。でも……今日わかんなくなったかもしれない」
額を胸にくっつけて、苦しい記憶を声で紡ぐ。
「今日ね、乱麻くんに意見したら“戦も知らないヤツが!”って怒られた。確かに私、守りたい守りたいって大口叩いてたけど、戦のことなんてまるで知らない。返す言葉もなかった」