狙われし姫巫女と半妖の守護者
「俺がいたおよそ16年前の戦の記憶のすべてを」
しばらく、紫希の黒い瞳を見つめていた。
黒髪が風にさらさらとたゆたう。
空の月は、自分で決めろと言わんばかりに物言わず明かりを下ろしていた。
私は、自らの力で頷く。
たとえ少しでも、戦というものを知らなくてはならないんだ。
私が強い眼差しを向けると、紫希も深く頷いた。
「では、記憶を送るぞ」
彼はそう言うと、私の両肩に手をかけ、顔を近づける。
少し俯いてかまえる私。
するとこつりと、額と額がぶつかった瞬間に、音もなく淡い光が視界を覆った。
まるで川の濁流に押し流されていくように、もう紫希の体温もわからないほど、意識が遠のいていった。
*・*・*・*・*
目もくらむような赤々とした業火の壁を、動かない一点から見上げていた。