狙われし姫巫女と半妖の守護者


それはまるで村を食いつくしていく怪物。

いくつもの家を燃料に、怪物はみるみるうちに大きくなっていく。

空には、まっ黒な羽が浮かび、扇をふるっている。

その度に、乾燥した風が吹き荒れ、火は勢いを増してうねる。

耳が壊れそうに様々な音が響き合う。

怒号、悲鳴、耐えない武器のぶつかり合う音、燃えさかる炎の弾けるような音。

ここはさながら地獄。

思い出も、人も、業火の中。

すべてがまっ赤だった。

血の赤。

火の赤。

田畑も家もわからない。

もう崩れ去っていた。

恐ろしい赤色に染まった村。

すると後ろから、足音が聞こえた。

「紫希、どうした!? いつ烏天狗が攻め込んできた!?」


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