狙われし姫巫女と半妖の守護者


話がつながった。

私を抱いて逃げて、皮肉にも村を守る結界によって故郷へ帰れなくなったんだ。

あの頃の紫希は、まだ大人を見上げていたほど幼かった子供。

姫巫女から託された私のことが、体を張ってボロボロになったお父さんに渡された真剣が、どんなに重かったことだろう。

村には会いたい人もいただろう。

なのに、あんな山奥の小屋にひっそりと暮らして、16年もの間、私を危機から救ってくれた。

そんな紫希に、私がなにかを求めるなんて、絶対にできない。

戦で失われたものは、決して、目に見えるものだけではないんだ。

とってもとっても大事なものを戦は奪う。

そしてそれは返らないんだって、私は知った。

私は紫希の優しい腕を掴んで押し戻し、顔が見えないように俯いた。

「だからずっと、人間の世界にいさせられる破目になっちゃったんだね……。ごめんね、私が紫希の自由を奪って」

凍てつく指を縁側の板につく。


< 396 / 568 >

この作品をシェア

pagetop