狙われし姫巫女と半妖の守護者
彼は依然自制するように顔を伏せたまま。
けれど、落ち着き払いすぎた声は誰からの横やりもゆるさない。
俺の叫びをきけ。
そう言わんばかりに、重々しい語りが私の胸を圧迫する。
「だが俺が13のとき前総代が死んだ。俺は成人を前に、烏天狗の総代となった。もちろん、九条家内外からは様々な批判の声が飛び交った。しかし俺は、人一倍鍛えた力で歯向かう者をねじ伏せた。俺の代で由緒正しき九条の名にキズをつけるわけにはいかぬのだ」
九条琴弥は目玉が落ちそうなほどに、目を大きくむく。
白目のど真ん中にある黒目が、狂気に満ちて黒光りする。
腕が翼のように音をたてて広がる。
手首もこめかみも首筋もすべての血管が浮き上がる。
彼は大口を開け叫んだ。
「俺は九条の名を守るために、生まれてきた! そのためならば俺は、屍の上にも立てる!」
鼓膜が痛い。
私は思わず身をのたうつ。