狙われし姫巫女と半妖の守護者
彼の悔しげに噛み合わされた歯が鈍い音をたてる。
「俺は、烏天狗の世界ならきっとうまく生きれたって、思ってきた!」
悲痛にほえる彼。
胸が鈍く痛む。
目の前にいる雨宮おじさんは、まるで同じ皮をかぶった別人のよう。
こんな憎しみにまみれた言葉を吐く人じゃない。
これは、雨宮おじさんなんかじゃないでしょう……。
私はそう思い込みたいけれど、見れば見るほど目の前にある男らしい顔は雨宮おじさんそのもので、私は耐えられなくて顔を伏せた。
なのに、私がこんな顔をしていても、雨宮おじさんはもう手ものばしてくれない。
またも、義務感にかられたように喋り出す。
それも、苦しげに喉をイジメているような声で。
「そんな憎むことしか知らない俺に手を差し伸べてくれたのは、明るくて強い涼子さんだった。俺は彼女を、嫌っていた人間を好きになってしまった……」