狙われし姫巫女と半妖の守護者
雨宮おじさんは、自分の膝に爪をたてて掴む。
力のこもった方は相変わらず震えていた。
私は息をのんでいた。
自分のお母さんの、お父さん以外との恋の話なんて、私は一度だって想像もしたことなんて、なかった。
「でも、やがて彼女の口から聞いたよ。『私は、伝説にも出てくる姫巫女なの、内緒だよ』って。その時俺は思ったよ、やっぱり俺が好きになった彼女は、人間とは違う特別な存在だったんだって」
雨宮おじさんはパッと顔をあげる。
髪が揺れる。
私は目を疑った。
苦渋にしわがよりきった顔の中で唯一、まっ黒な瞳が異様に爛々と煌めいていた。
寒気がして私は凍りつく。
ただの、愛しむ瞳とは違う。
ぞくりとするなにかが奥に潜んでいる。
この人は、本当に雨宮おじさん……?
「だけど、想いも告げられぬまま、彼女は平凡な男と結婚してしまった。彼女はそんな安い存在ではなかったのに!」