狙われし姫巫女と半妖の守護者
怒りにうち震えた奥歯を噛み締めた。
怒りをあおるようになおも、男の声は鼓膜を叩く。
「ずっと憧れつづけた妖怪の街にだ。それに、素晴らしい彼女を、人間と慣れ合う半妖という中途半端なヤツらからひきはがせるチャンスだった。俺の夢が叶うかもしれないと思った」
私は歯を食いしばる。
男は崩れ畳に額をつけた。
「でも俺は、あんな酷いことをするつもりはなかった……! 彼女の命を奪うなんてありえない! 君からお母さんの命を奪うなんて……。俺は後悔してるっ……」
なんの意味もない弁明が部屋中に響き渡る。
私は身をよじる。
耳を今すぐにでもふさぎたい。
「俺はただ、涼子さんが好きだった……」
今更、深く愛しむような、か弱く上ずった声。
私は男を睨みつけた。
そんなにも、愛のこもった声を出せるなら、なんで酷いことをしたの?
なんでそんなことができたの?