狙われし姫巫女と半妖の守護者
私も、動けない。
でもそんな呆然としている私に、響は言葉を突き刺した。
「おい、お姫様、殺していいな?」
殺す……。
お母さんの仇だ……。
うわ言のように頭の中で呟いていた。
響の言うとおりだ。
愛した女性にすることではない。
今、その男の命をすぐに奪える刃がそこに押し当てられている。
男は震えもせずにそれを待っている。
お母さんの本当の想いもわからないまま、なにも言わずに殺されようとしている。
私は大きく声を振り絞った。
「待って!」
叫び声のあとに、静寂が訪れる。
響の手は引くこともなく止まっていた。
私は、響の冷たい目を、真摯に見つめた。
「やめて。殺す価値もない」