狙われし姫巫女と半妖の守護者
私は恥ずかしくなるくらい、周りが見えなくなっていた。
「あなたは、お母さんのことが好きだというのに、なにもわかってない……。私のお父さんの愛には、足元にも及ばないわ」
やっと、私は気づいたよ。
紫希の言うとおりだった。
私はもうい一度、泣き震える男を見下ろした。
残りの力を振り絞って、声にする。
「もう決して、お母さんの誇りを汚さないで。そして、私とお父さんの目の前に、もう二度と姿を見せないで!」
瞼をギュッと閉じて放った決別の言葉。
やっと、ケリがつく。
私はあの見知った姿から完全に目を背け、悲しみを噛み殺す。
「さっさとこの男をつまみ出せ」
響の声がしたのと同時に、騒々しい足音がいくつも聞こえた。
涙で滲んだ視界の端に、黒装束の男2人に連れ出される彼が見えた。
あっという間に去り、襖の向こうへ消えた。