狙われし姫巫女と半妖の守護者
なら、私も最後まで諦めない。
平凡だった私が、渾身の大芝居をうってやる。
開け放った障子から、眩しい太陽を見上げた。
あの村をもう、襲わせはしない。
私は決意したんだ。
その瞬間、襖は開いた。
「失礼いたします。新婦様」
漆黒の着物を着た女性が、私に深々と礼をする。
私は余裕を持って苦笑いする。
新婦様。
鈴代凛でもなく、姫巫女でもなく、今度はもう名前さえ失ったのか、私は。
それでも私は何とも思わない。
逆に今なら笑ってやれる。
お父さんが、真央が、そして、紫希が……、私の大切な人たちが、私の名前を覚えていてくれれば、それで十分。
場所も、流れる血も、関係ない。
私はいつだって、どこだって、ただ鈴代凛だから。