狙われし姫巫女と半妖の守護者
好きでもない人のために、こんな格好をさせられる破目になるとは思っていなかったけれど、そんなことを言っている場合ではないんだ。
私は張り巡らされた幕の隙間にすっと手をかけ、向こう側をのぞき見る。
慌てて手で口を覆った。
砂利の上には赤々とした絨毯が広々と敷かれ、そこには黒い装束の男たちが正座して何列にもわたって並んでいたのだ。
数にして50人以上。
目のすぐ前で、照明としてたかれた松明の火がくらくらと揺れる。
これがすべて、この婚姻の儀の参列者……。
左手にはまっ白な壇上があり、ふたつの席が並べて設けてある。
これは本当に、日本的な結婚式だ。
手が震え、こっそりと開けた幕を閉じかけるけれど、前方の方から低く抑えられた声が聞こえてきた。
「あの琴弥という小僧にはついてゆけぬ。他の種族間では、種の激減から、この世の新たな頂点の座を争う戦が激化しているというのに、あの小僧のせいで出遅れておる」
私はすぐに耳を傾けた。