狙われし姫巫女と半妖の守護者
九条琴弥のことの話だ。
よく見れば、最前列に座っている、数少ない紋付き袴姿のおじさんがふたり、顔を伏せ気味に言葉を交わしていた。
私は更に耳へ神経を集中させる。
「目の上のたんこぶのようなじじいがやっと死んだと思えば、今度はまるで生き写しの小生意気な小僧。時代は流れているのにいつまでも、半妖の村なんぞの壊滅ばかり考えておる。あんなクズども、勝手にさせておけばよいのだ。姫巫女さえ手に入れば、もうそれで満足であろう」
私は息をひそめ、眉間に力をこめる。
村をバカにされていることは腹が立つ。
でも今はそれよりも、琴弥のことだ。
総代だというのに、信頼されているようには聞こえない。
むしろ、不信感で溢れている。
半妖の村のことが、取るに足らないこととされている……。
彼の考えが、大多数と食い違っている?
「ああ、同感だ。兵からも、勢力争いの出遅れから烏天狗一族の立ち位置をあんじ、不満の声が上がっておる。やはりあのような小僧は総代の座にふさわしくないのう」