狙われし姫巫女と半妖の守護者
ほくそ笑む声が耳に響いた。
1メートル以上の距離をもって、プライドの高そうな上げ底の下駄が、砂利を踏みにじる。
偉そうに腕を組んで現れた黒い羽織に袴姿の花婿が、泣きぼくろのすぐ上にある目を愉快そうに細めて、私をとらえている。
私はしとやかに両の手先をそろえ、やわらかに微笑んだ。
「ええ、あなたと結婚する決意ができました」
その裏に、もちろん、強い心を燃やして。
勝ち誇ったように私を見下ろす彼に、私は視線を突き刺し続ける。
しおらしくなったなんて思ってくれるな。
私の名芝居でこの男にひと泡吹かせてやる。
私は一瞬にして力強く目を見開いた。
「そう、あなたのメンツがつぶれないように結婚、してあげる。でも、私にもたったひとつだけ要求がある」
私は背筋を伸ばして彼を見下ろした。
「なんだと……?」
琴弥は手の色が変わるほどに拳を握りしめ、食いしばった歯をむき出しにする。