狙われし姫巫女と半妖の守護者


私は目を丸くして横を向く。

琴弥の背中が壇上の縁で、それは大きくそびえたっていた。

重厚な漆黒の羽織りが、風に大きくたなびいて、翼の如く広がった。

「我が兵に告ぐ。半妖どもを直ちに抹殺せよ」

温度のない声だった。

一瞬誰もが凍りついた。

風も木々も黙りこみ時が止まる。

琴弥は戦場と化した式場を、静かな眼差しで見つめている。

あまりに冷え切った瞳だった。

鼻先をかすめる空気が変わった。

ひやり冷たくて、肌をさすような鋭い風。

やっと、震えだすように木々が騒ぎだす。

ようやく戦場が目覚めだす。

全員が黒い翼を広げる音であたりは満ちた。

黄昏の空に黒い翼が舞いあがる。

彼へめがけて黒い光線の雨が降る。


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