狙われし姫巫女と半妖の守護者
「俺は、お前を全然守れていない。俺なんかのために、お前をキズつけた」
彼の膝に煌めくものが落ちる。
そして間もなく彼は筋張った手で喉元をおさえ、苦しげに呻きだした。
私は首を横に振り、唇をかみしめて、涙を一筋こぼす。
私なら大丈夫……。
そんなことよりも、あなたはなんでそんなにも苦しい声を奏でるの……?
私はそれの方がずっと痛い。
すると彼は、顔をぱっとあげた。
悲しみによじれきった顔。
かたくかたく眉間にしわを寄せて、たくさん涙をためて。
「それになにより、お前には、この姿を見せたくなかった! これを見ればわかるだろ。俺はずっと、お前に正体を隠していた。お前を騙していたのと一緒だ。俺は、お前の母の仇の血を継いでいるんだぞ!」
強くてもろい彼から、まるで水晶のようにきれいすぎる涙がこぼれて、大地を打った。
「俺のもうひとつの名は、九条紫希なんだぞ」