狙われし姫巫女と半妖の守護者
なのに、その村で育った紫希がそんな悲しいことを言わないで。
私は狭くなった喉で無理矢理唾を飲み込んで、消えいってしまいそうな声で私は問いかけた。
「じゃあさ、紫希はお父さんのことまで嫌ってるの?」
「そんなこと、ない……。だけど、よりにもよって、烏天狗だぞ……。誰にも見られたくなかった。だから、剣術を磨いてきたのに。俺は弱い。こんな羽、なければよかった。父さんだって烏天狗に生まれなければ……」
紫希は刀を握りすぎてかたくなった手の平を徐に広げる。
そしてすぐにその手の平に爪をつきたてようと、強く握りしめようとしていた。
私はそのかたい手をすかさず取って、握りしめた。
私は彼の顔をまっすぐにとらえる。
そうして、誇らしく言うのだ。
「それは違う。大事なのは、なにに生まれたか、じゃない。どうあろうとするか、だよ」
彼の瞳が大きく開かれる。
私の手の中で彼の手から強張りが抜けていく。