狙われし姫巫女と半妖の守護者


この村に、恥じるものなど、なにひとつありはしない。

あるのは誇れるものだけだ。

私たちは彼の作った空気なんてぶち破り、力強く見返した。

そして彼は、歯向かう瞳に、瞬時に牙をむいた。

「今度こそ我が一族の血を汚したその男の首は、俺の手で落としてやる。全軍、一気に攻めこめ!」

琴弥の声が地を渡ってとどろく。

凄まじい数の烏天狗がその羽を広げ地を蹴っていく。

地震のように地が揺れる。

藍色の夜空を、更に暗い漆黒が視界を埋め尽くす。

私の後ろへと、村へと飛んで行こうとしている。

私は目を見開ききって息をのむ。

このままでは村がやられてしまう。

けれど、紫希が私の前で、お父さんから受け継いだあの煌めく刀をかまえ、背中で声を放った。

「心配するな。皆を信用しろ。凛は能力を放つことだけに集中しろ」


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