狙われし姫巫女と半妖の守護者


手に握っていた鈴を思い出して、手を開く。

鼓膜を壊すほどの戦の音が鳴り響く。

私はあたりを必死になって見渡した。

そして、大きく目を見開いた。

地上から攻め入る烏天狗たちに、体当たりでぶつかって跳ね返す男性たち。

空をかける烏天狗の翼に矢が刺さって落ちていく黒い影。

「空から攻め入ろうなんて甘い! 女衆を甘く見んといた方がいいね、烏天狗ども!」

私は慌ててふりかえった。

空に轟いた威勢のいいしゃがれた声。

そこには矢を射る女性たちのまん中で、腕を突き上げる腰の曲がったお婆さんの姿。

彼女が元気に私へとウィンクする。

セツ婆だ。

胸に熱いものがこみ上げる。

私は鈴を強く握りしめる。

セツ婆に深く頷き、身をひるがえす。

私の目の前で、紫希の刀が迷うことなくふるわれている。


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