狙われし姫巫女と半妖の守護者


紫希は言った。

皆を信用しろって。

だから私は、力を引き出すことに集中するの。

私は髪を振り乱して鈴を抱きこむ。

お願い、お母さん……。

私にあの気高い強さをください!

けれどその時、憎しみの塊のような声が前方から恐ろしい勢いで押し寄せた。

「くたばれ!!」

高く切ない金属の音が、鮮明に上空をかける。

私は思わず瞼を押し開いた。

絶望の色をした紫希の顔がその音の元を必死に追っていた。

彼の前ではじけ飛ぶ黒い光線と、宙に舞い吹き飛ばされる彼の刀。

「とどめだ!」

琴弥の大きく開いた手の平が、紫希へと向けられる。

私は弾かれたように駆けだした。

遠くで紫希のひきとめる声がしたような気がした。


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