狙われし姫巫女と半妖の守護者


そんなとき、いくつもの声が耳に飛び込んできた。

「姫巫女様、お逃げください!」

「そうだ、凛様の逃げ道を作れ!」

私は刀から手をはなし身をひるがえす。

「あとはこの私たちにお任せください」

「凛様はやく!」

村の人々が左右に分かれ、私の前に道を作る。

皆、必死の形相で顔を歪ませ、腕にはかたく武器を握り、私に強く呼びかける。

一番手前にいたセツ婆が、しわがれた手で私の手をきつくきつく掴み、頭をすりつけて懇願する。

私の腕にあまりに重い想いがのしかかる。

セツ婆の声が、苦しげに詰まりながら懸命に紡がれるのだ。

「凛様にはどうか無事でいてほしいのです! だから、だから、どうかお逃げください!」

私は声も出なくなって、顔を歪め涙をこぼす。

唇の隙間から情けない嗚咽が漏れる。


< 519 / 568 >

この作品をシェア

pagetop