狙われし姫巫女と半妖の守護者
必死に上を向くセツ婆の顔が切なくにじむ。
たくさんの村の人の優しい眼差しが、私を包む。
自分への悔し涙が止まらない。
私が守らなければいけないのに、守られようとしている。
みんな私よりもずっと強い。
自分を犠牲にしてまでも、誰かを守ろうとする。
あたたかすぎて、心が割れそうに痛い。
私はなんでこんなに無力なのだろう。
無力な手で戸惑いながら、セツ婆の手を握り返す。
私は自分がイヤになって、声を漏らし泣く。
するとその瞬間、声高に恐ろしい言葉が叫ばれた。
「我が兵よ、最期の命令だ」
私は声を止め、おろおろと瞳を揺らしながら、首を後ろへひねった。
セツ婆の手に力なくすがりながら、琴弥を見る。
扇を持った右腕が天高く突き上げられ、漆黒の影を落としていた。