狙われし姫巫女と半妖の守護者


正しい者を、ただ懸命に生きる者を、いつだって救ってくれはしない。

世界は残酷だ。

涙を流したって、世界は動いてくれはしない。

私は悲しい。

誰も助けられないくせに腕があることが、どこにも誰も逃がしてあげられないのに足があることが、もどかしくてたまらない。

酷過ぎる。

私の追いすがった手の中でセツ婆の細い手が、力なく震えだす。

こんなにも一生懸命力を合わせて生きている人たちがここにいるのに……。

あんな非情な烏天狗たちに、ここにいるみんなの希望を奪われると思うとたまらない。

あの大きな大砲の餌食にならされるなんて、ふざけているでしょ……。

けれどそんな中、声が上がりだした。

「総代様、それは、私たちにも半妖とともに心中しろということですか!?」

「私達のことをコマとしか思っていないということですか……」

ゆっくりと振り返ると、琴弥の周りに何人もの烏天狗が群がっていた。


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