狙われし姫巫女と半妖の守護者
ある者はがくりと膝をおり、ある者は琴弥に掴みかからんとしている。
動揺は瞬く間に波紋のように広がり、ひりついた緊張感が漂っていた。
私は、そのまん中に微動だにせず立っている琴弥の姿を、唾をのんで見つめた。
いったい、なんと答えるの……?
誰もが黙ってその答えを待った。
そして彼は、自らの兵たちではなく、掲げた扇を仰ぎ見て、口にしたのだ。
「今更なにを問う? 俺は不可欠な頭脳。お主ら兵は、ただの手足だろ。手足が、一人前に意思を持とうとするなんて、100万年早いわ!!」
兵たちは、力ないため息をついた。
私たちは言葉もなかった。
琴弥、ただひとりが、なにも見えない夜空の下で、不敵に笑っていた。
「やはりあなたはそういう人だ。先代と吐き気がするくらいにすぎている」
「もとはといえば九条家の不始末、自分でなんとかしたらいいんだ」
兵から静かな抗議の声が次々にあがりだす。