狙われし姫巫女と半妖の守護者
なぜだろう、圧倒的な強さを誇っていた彼が、またあわれに見える。
星もろくに見えない空の下で、彼にはどんな幻の光が見えているの……?
目の前の仲間ではなくて、いったい彼はなにを見ているの……?
「そうだ、そうするがいい! 身勝手な人間界への遠征に、広い視野を持たぬ政治! 盲目の王様! いい加減ついてはいけない!」
「撤収するぞ! こんな小僧、はなから総代には相応しくなかったのだ! 好きにしやがれ!」
耳を痛いほどに叩く、吐きつけるような罵声。
琴弥の頭上に、一斉に黒い羽根の大群が舞い上がる。
草原に情けなく、ひとり取り残されたあわれな王様。
ひとりには広すぎる草原に、たったひとつの動かぬ影を伸ばし続ける。
風までも切なく鳴いた。
そうして彼はおもむろに手を下ろし、呟いた。
「使い物にならぬ兵だ。まあいい。お主は逃げぬのか、我が弟よ」