狙われし姫巫女と半妖の守護者
唯一本当に知っているのは、お母さんがこの神社のひとり娘で巫女を務めていたことだけ。
お父さんには婿に来てもらったらしく、お母さんはこの神社を継いだのだそう。
だから私も、写真の中のお母さんみたいに、立派な巫女さんになりたいなって夢を持っていた。
そんなの、幼稚園児の頃の話だけど思い出せば懐かしい。
私はふと思い出し、壁にかかっている新聞屋さんの名が入ったカレンダーを見やった。
今は4月。来月にはお母さんの命日が来る。
私の誕生日も。
命日は私の誕生日から2週間ほど後だ。
「早いな……」
そう呟いて立ち上がる。
私は16歳になる。
ていうことは、お母さんが亡くなってからもそれだけたつんだね。
ねえ、お母さんは今も私たちを見ていてくれてるのかな?
気持ちが思い出に浸ろうとするのを押し止め、花瓶の花をちょんとつついて揺らしてみる。
私は今更なにを考えているんだかと小さく笑う。
そろそろ境内の掃除に行こうと、大きく伸びをして居間を出た。