狙われし姫巫女と半妖の守護者



唯一本当に知っているのは、お母さんがこの神社のひとり娘で巫女を務めていたことだけ。

お父さんには婿に来てもらったらしく、お母さんはこの神社を継いだのだそう。

だから私も、写真の中のお母さんみたいに、立派な巫女さんになりたいなって夢を持っていた。

そんなの、幼稚園児の頃の話だけど思い出せば懐かしい。

私はふと思い出し、壁にかかっている新聞屋さんの名が入ったカレンダーを見やった。

今は4月。来月にはお母さんの命日が来る。

私の誕生日も。

命日は私の誕生日から2週間ほど後だ。

「早いな……」

そう呟いて立ち上がる。

私は16歳になる。

ていうことは、お母さんが亡くなってからもそれだけたつんだね。

ねえ、お母さんは今も私たちを見ていてくれてるのかな?

気持ちが思い出に浸ろうとするのを押し止め、花瓶の花をちょんとつついて揺らしてみる。

私は今更なにを考えているんだかと小さく笑う。

そろそろ境内の掃除に行こうと、大きく伸びをして居間を出た。


< 53 / 568 >

この作品をシェア

pagetop