狙われし姫巫女と半妖の守護者
今まで一度も気づかなかった。
巫女服の襟に、なにか見覚えのある紋章が入っている。
私は賽銭箱の横をすり抜け石段を駆け上がり、拝殿へと近付けば、紋様がはっきりと見えた。
「ウソ……」
吐息のように吐き出した声が、薄暗い社の中にこだまする。
掘られてくぼんでいる紋様が黒々と浮き上がって見える。
ひとつの鈴が描かれた紋章。
私は鎖骨の辺りに手の平を押し当てる。
この手の下にある、痣の形とそっくり同じ……。
押さえている手が勝手に震えだし、私は動揺して紋章から目を離し顔を伏せる。
頭の中でまた、あの烏天狗の男の声が大きく響く。
姫巫女と何度も聞こえてくる。
私がこの姫巫女と、どんな関係があるっていうの……?