狙われし姫巫女と半妖の守護者


今まで一度も気づかなかった。

巫女服の襟に、なにか見覚えのある紋章が入っている。

私は賽銭箱の横をすり抜け石段を駆け上がり、拝殿へと近付けば、紋様がはっきりと見えた。

「ウソ……」

吐息のように吐き出した声が、薄暗い社の中にこだまする。

掘られてくぼんでいる紋様が黒々と浮き上がって見える。

ひとつの鈴が描かれた紋章。

私は鎖骨の辺りに手の平を押し当てる。

この手の下にある、痣の形とそっくり同じ……。

押さえている手が勝手に震えだし、私は動揺して紋章から目を離し顔を伏せる。

頭の中でまた、あの烏天狗の男の声が大きく響く。

姫巫女と何度も聞こえてくる。

私がこの姫巫女と、どんな関係があるっていうの……?


< 55 / 568 >

この作品をシェア

pagetop