狙われし姫巫女と半妖の守護者
私の頭の中はすぐに彼でいっぱいになる。
行かなくちゃ。
彼に今言わなくちゃ。
「ちょっとごめん!」
私は勢いよく身をひるがえし地を蹴った。
迷いなどない。
怖さもない。
私は風よりも早く駆ける。
羽がなくても、特別な力なんかなくても、森の中を人一倍はやく駆けて、私は草原に飛び出した。
青く眩い草原のまん中には、いつもいつも見つめてきたあの薄灰色の着物の背中。
大好きな人の広い背中。
「紫希、ありがとう。本当に本当にありがとう」
私は腕をいっぱいに広げて、何の遠慮も我慢もせずに紫希へ抱きついた。
紫希は驚いてよろけそうになったけれど、私がしっかり彼の肩を抱く。
彼はいつもあたたかい。
私は背の高い彼に合わせて、精いっぱい背伸びしてぎゅうと力をこめて抱く。