狙われし姫巫女と半妖の守護者
私は本当に怖かったから、もう賽銭箱の前にへたりこんでしまった。
また、烏天狗かと本気でそう思ったのだ。
地面についた手の平が土でざらつく。
「そんなところに座り込んでどうした? ああ、箒を投げ出して」
社の前にいつ間にかはなしてしまった箒をお父さんは拾い上げる。
ちょっとメタボ気味でズボンのウエストの上に乗ったお肉が、屈むとむにゅっと膨らんだ。
私はそのお腹に、睨みを利かせた視線をつきたてる。
「どうしたもこうしたもないってば。驚かさないでよ。どこ行ってたの?」
お父さんは拾った箒を無駄にもう片方の手に持ち替え、私とは目を合わせようとはしなかった。
「いや、別に、なんでもないよ」
結果、返ってきた答えはなんとも歯切れが悪くて私は首を傾げた。
それでもお父さんは拝殿の前へと進み、姫巫女様に礼をする。
その背中には枯れた葉がくっついたままになっていた。