狙われし姫巫女と半妖の守護者
私はもう一度、お父さんの現れた茂みを見やった。
あの日私はあの辺りから迷い込んで、洞窟の前へと出された……。
こんな古い紙、洞窟の入口にあったお札ぐらい。
視線を戻せば、あの紋章の刻まれた姫巫女様がこちらをじっと見下ろしている。
お父さんは無表情のまま、前だけを向いていた。
「ねえ、お父さん。なんでさっき答えなかったの? 洞窟に行ったんでしょ?」
私はお父さんの肩から紙の切れ端を取って詰め寄った。
お父さんは見せつけられた紙に目を丸くしたけれど、すぐ眉間に激しくしわを寄せたのだ。
「なんでお前が知ってるんだ? 洞窟に近づいたのか? 昔からずっと父さん言ってきただろ」
凄まじい剣幕で怒鳴りはじめるお父さん。
私は目をみはってたじろいだ。
お父さんの声が引き、向き合った私たちの横で賽銭箱の上から下がる太い縄が微かに揺れている。