狙われし姫巫女と半妖の守護者
ずっとずっと、お母さんのことを話したがらないお父さんへ、私は心の奥底で不安な気持ちをいっぱい抱えていた。
イヤでも滲みだしていきそうな本音と心細さで、顔が歪んでいくのがわかる。
私を産んだ後亡くなったのだから、私をどこかで憎んでいるのかなって、実は思ったときもあった。
だから、お父さんにお母さんのことをきくのはいつだっておっかなびっくりだったのに……。
「そんなわけないだろう。とにかく、なにがあろうともあの洞窟には近づくんじゃない」
今にも崩れそうで踏ん張っている私に、お父さんは低く抑えた声で忠告する。
私はそれしか言ってくれないお父さんが信じられなくて、思わず顔を覗き込んだ。
ほんの少しだけ、なにかを堪えるようにお父さんの太い眉が小刻みに震える。
まるで不安で怯えるように。
「さて、父さんは夕飯の支度をしてくるよ」
そして背を向けたお父さんは、普段通りのトーンでなにもなかったかのように呟いた。
悔しくて見上げた空には、森へと帰る鳥の群れが飛んでいた。