狙われし姫巫女と半妖の守護者
うまいウソも思いつかなくて、彼の視線から自分の横顔を隠すように右手でそっと覆う。
「じゃあ、僕でよければ教えてあげるよ」
「えっ、いいの?」
あまりに早い切りかえしに私が首を傾げれば、彼は得意気に胸を叩く。
まるで、任せとけと自慢げな小学生みたいに、いーっと歯を出して。
こんな顔もするんだ……。
私はそんな子供みたいな彼に、胸の奥がキュンと疼く。
クラスではアイドルみたいに遠い人のような気がしたのに、今はとても近くに感じる。
かっこいいけれど、普通のひとりの男の子なんだと初めて思った。
そんなことをしみじみ思っている間に、彼は喋りだしていた。
「その洞窟から出てくる妖怪は、確かに恐れられていたんだけどね、中には人間好きの温厚な妖怪たちもいたらしい。こんなに怖いのじゃなくてね」
彼は本に描かれている鬼のような恐ろしい挿絵を指し示したあと、指を角にして鬼をまね、おどけてみせた。