狙われし姫巫女と半妖の守護者
私は軽く吹き出して笑いつつも、そんな妖怪がいたことにちょっと驚く。
烏天狗のように、恐ろしいものばかりではないのかな?
そして彼はやわらかい声で話を続ける。
「やがて、そんな妖怪と人との間に、種族を超えた愛がひそやかに生まれたんだ。そして、妖怪と人間の混血の“半妖”と呼ばれる子ができたという。その家族たちは正体を秘密にして、人間界で仲睦まじく暮らしていたらしい」
「種族を超えて……」
夢中になって聞いていた私は、遠くをぼうっと見て呟いた。
妖怪のイメージとはまるで違う。
優しくて、穏やかで、つつましやか。
種族を超えて愛し合うなんてステキで、ドラマの中の話みたい。
自分の身に置き換えてみるけれど……。
烏天狗は恐ろしい。
私を守ってくれたあの和服の彼だって何者かは知らないけれど、なんだか人間味を感じない。
分厚い壁があるみたいに、距離を感じる。
まったく違う世界に住む彼らと愛し合うなんて、想像もつかない。