狙われし姫巫女と半妖の守護者
「そして、あの洞窟の向こうに結界を張った小さな村を作ったらしい。そこを半妖の村と名付けて、半妖の子を持つ家族が穏やかに暮らせる村にしたって話だよ」
私はひそかに九条くんから視線を逸らし、眉をひそめた。
あの洞窟のむこうがその村なら、なんで烏天狗が出てきたの?
結界は、もう切れたの?
「これが姫巫女伝説のすべて。ちなみに姫巫女が使った鈴は見つかっていなくて、今もこの村のどこかに眠っているんだって」
「あっ、ありがとう。すごく勉強になったよ」
考えにふけっているうちに話が結ばれていて、焦ってお礼を言った。
良くも悪くも、烏天狗のことが、姫巫女のことが、少し知れた。
こんなに壮大なこと、まだ私の頭の中にはおさまりきらないけれど……。
私は九条くんに向き直って、心からにっこりとした。
もうかっこいい彼に対する緊張はなくなって、普通に話せる。
「それにしてもよく知ってるね。びっくりしちゃったよ」
こんなにサラサラと、しかも聞きいってしまうくらいうまく伝説の話ができるなんて意外だったのだ。
すると彼は頭をかきだし、言いづらそうに口ごもる。