狙われし姫巫女と半妖の守護者


耳元で突然声がしたと思ったら、無理矢理手で口を覆われた。

恐怖が背中を駆けのぼる。

怖さで全身がこわばっていく。

声を出そうにもぴったりと手で覆われて唸ることしか叶わない。

両腕で羽交い締めにされ、その腕を解こうとひっかくようにつかみかかったって、痛いくらいに肩にかけられた腕はほどけない。

怖い怖い怖い。

頭がそれだけでいっぱいになる。

顔も見えずにおさえつけてくるこの人が恐ろしい。

助けを求めて大急ぎで視線を張り巡らせた。

庭先に出ている人もいない。

車さえ通らない。

鉄筋が乱雑に並んだ鉄工所には、人影すらも見当たらない。

しんと静まり返った道で、私だけが誰にも気づかれず呻いている。

懸命に手と足で足掻いても、背後の人はびくともしない。

自然と涙目になる。


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