狙われし姫巫女と半妖の守護者
放して放して放して!
塞がれた口で狂ったように体を揺さぶって叫ぶけれど、拘束する腕が私の肩にねじこんだ。
痛みに顔をしかめれば、背後の人物が嘲笑うように私の顔の横へ頭をつきだしたのだ。
「大人しくしてほしいなぁ。俺は、姫巫女様を迎えに来ただけなのに。このままだと、そのうち来るお友達を巻き込んじゃうかも?」
私の足掻きはピタリと止まる。
緩くパーマのかかった漆黒の髪に、どこまでも深い闇色の瞳。
あの日襲ってきた、烏天狗。
三日月形にしなった唇からこぼれ落ちた言葉に、真央の顔が浮かぶ。
楽しんでいるようにしか見えない煌めく瞳に私は口を開きかけて声を失った。
もう、人形のように手足の力を抜く。
抗えない、こんな人に。
「その顔いいね。ははっ。姫巫女様にはこれから、色々とききたいことがあるんだ」
すると、人間の姿形をしたままの烏天狗は私に逃げる隙も与えず抱き上げて、二棟建っている鉄工所の倉庫の間へと逃げ込んだ。