夏の夜に咲く恋花火 ~夏祭り~
第1章~新入社員の淡い恋~



季節の移り変わりは早く、

お花見の場所取りに盛り上がっていた社内ももう花火大会へ話題が移る。




私の配属された営業部はイベントが大好き。


幹事役の同期の男性社員が各地の花火大会の情報を集めては、興奮気味に話す。




入社一年目。



やっとこのかかとの高いハイヒールにも慣れた。




初めて使う敬語。

お客さんへのお茶出し。

ホッチキスの止め方。

社内メールや、社員食堂の使い方。

ちょっといじわるな先輩との付き合い方。



何もかもが初めてで、不安でいっぱいだった。



学生と社会人との違いに、驚くと同時に自分に自信を失くした数ヶ月だった。



無我夢中で走った4月からの日々。



胸を張って自分の席につくことができるようになったのは、つい最近のこと。



胸にかけた名札『営業部 神山』が、やっと自分のものだと思えるようになってきた頃。




私は、神山彩。



短大を卒業してこの会社に入社した21歳。







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