夏の夜に咲く恋花火 ~夏祭り~


エレベーターで一緒になった1年先輩の総務の女性が、

相川君の名前を出した。



狭いエレベーターの中で、

その会話は聞きたくなくても聞こえてしまう。



「相川さんに合コン頼んでよ!」


「無理だって。相川さんは絶対彼女持ちだと思うよ~」



うつむく私の横で、

小谷恵美は口だけ動かして

「ただのウワサ!」と

私を元気付けようとしてくれた。




ここまで本気になっているとは

つい最近まで恵美も知らなかった。



だって、私自身が知らなかったことだもんね。



こんなにも相川君の存在が大きくなるなんて…ね。



その日の3時を過ぎた頃から

胸がざわざわとして、何度もトイレへ行った。




緊張しすぎて、食欲もなく、体が火照っていた。




もうすぐ…

一緒に花火を見ることができるんだ。




憧れの相川君と同じ場所で、

同じ花火を見ることができるなんて…




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