夏の夜に咲く恋花火 ~夏祭り~
営業部に素敵な男性もいた。
入社してすぐの春、親切に仕事を教えてくれる先輩に好意を持ったりもした。
でも、すぐに現実にぶち当たり、仕事の先輩としてしか見ることができなくなる。
上司に怒られ、一人で文句を言う姿を見たり、
自分の失敗を後輩のせいにしたり…
そばにいる人にしか見えないそんな男らしくない態度で、私の淡い恋はすぐに散った。
相川君に対するこの憧れも、遠いからこそ続いているのかも知れない。
私達には、彼の素敵な部分しか見えないから。
いつもバタバタしていて雰囲気の悪い私達のフロアにやってきて、空気を変えてくれる人。
春風のような存在。
仕事に追われ、息の詰まる営業部に「最近、どう?」と明るい声をかける。
時には、総務に届いたお土産のケーキを差入れてくれたりもする。
慣れない仕事と、不安な社会人としての生活の中に、相川君の存在が必要不可欠になっていった。