夏の夜に咲く恋花火 ~夏祭り~




「お疲れ様です!花火大会、俺、参加でお願いします!」




相川君の手には、最近できた近所の有名なケーキ屋さんの紙袋。




「これ、皆さんでどうぞ!」



相川君は、入口近くの先輩ではなく、私にその紙袋を手渡した。



「え~っと…神山…さん?」



初めて名前を呼ばれた。



私の名札を見る相川君。



細めた目がかっこよくて、私はただただ見とれていた。




「あ…はい!!神山です!」



私は、相川君のピンクのネクタイを見つめたまま動けなくなった。



突然、名前を呼ばれた私は、授業中に居眠りをしていて先生に突然名前を呼ばれたような…


目を真ん丸くして、席を立ち、呆然と突っ立ったまま。


そんな私を見て、相川君はケラケラと笑い出す。


あ。



笑った。



あの顔が、疲れた心を癒してくれるんだよね。




ピンクのネクタイに薄いグレーのストライプのシャツがとても似合っていた。



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