僕を止めてください 【小説】
「この口で咥えたの…?」
唇を指でなぞられながら、僕は問われていた。
「は…い…」
「硬いのを奥まで押し込まれて…?」
「え…ええ…」
二本の指を歯の隙間から差し込まれた。
「ここを…奥まで…?」
指を喉の奥まで差し込んで、寺岡さんは誰にも聞かせること無く独りで呟いた。
「気持ちよかったの? ねぇ…裕君? 苦しかったんでしょ? それともこれだけでイッちゃったの?」
舌の上を指が撫で回す。指が入っているので答えることができない。ねぇ…大きかった? 舌を使ったりしたの? 息ができないほど喉の奥までつめ込まれたの? 吐き気がするくらい押し込まれた? どんな味だった? 君はしゃぶってあげたの? いつも咥えてたの? 彼はどこが感じるの? 何度もイクの? 君の口の中に何度も出すの…?
独り言のように呟きながら、僕の体液で汚れた口の中を二本の指で寺岡さんはかき回し続けた。しばらくしてその指をゆっくり抜いた。僕の唾液と精液にまみれ粘液が糸を引く指を、寺岡さんは自分の舌で丁寧に舐め、そして僕に尋ねた。
「逢いたいでしょ…小島隆に」
「…いいえ」
「私は…逢いたいよ…それに…」
寺岡さんは不意に笑った。
「あはは…私じゃ、ダメだねやっぱり。君は小島君に抱かれなきゃ」
「同じですよ…皆んな…同じです」
「そうかなぁ」
そう言うと寺岡さんは僕の首に両手を掛けた。冗談かと思った。寺岡さんは僕の首を指で撫で回していた。それだけで僕はまた硬くなり始めた。
「あのお父さんは君を置いていかないよ」
「置いていかなきゃ…ダメです」
「でも…ね…裕君」
寺岡さんは僕の頸動脈に指を当てた。
「ごめん…約束破るね…このまんまじゃ…誰も、この先にいけない」
「そこ…ダメですよ! すぐ落ちますよ…僕が死んだら寺岡さん犯罪者になっちゃう」
冗談ではなく本気に見える寺岡さんの両手首を僕は掴んだ。
「いいよ。ブタ箱には一度入ってみたいって思ってたんだ。受刑者の共同便所…憧れるよね」
「ダメです…!」
「いいから…今の君のこの状態なら…私でもできる。小島君や松田君みたいに」
「ダメです…僕は死んでもいい…でも…」
「イッて、裕君…君はコレでは死ねないよ…死ねたら…いいのにね」
抵抗する気があったかどうかわからない。軽い力だったが、寺岡さんは正確に頸動脈洞を両手の親指で押さえた。刺激があれば、すぐに僕は落ちる。その軽さでイケるのかと思ったが、巻き付いた指と一瞬で気が遠くなる感覚が、あっけないほど完全な再現性を再び証明した。そのあとはもうなにも考えられなかった。
「はうっ! うあぁ…イクぅぅ!」
さっき出したにも関わらず、とても久しぶりに僕は落ちながらイッた。でも、それと隆とどうつながるのかは、唐突過ぎて僕には寺岡さんの意図が一切わからなかった。股間でしぶく体液を感じてすぐに、僕はいつものように意識を失った。