僕を止めてください 【小説】
「これがあるから…僕は犯罪者にならなくて済んでる。これだけじゃないけど」
ああ、そうか。この写真は、他のと確かに違う。僕にもそれがわかった。なぜなら。
「これ、2枚だけ…自殺じゃないですからね」
「えっ…?」
「僕はこれ、他のと比べて印象ないんです。僕は圧倒的に自殺のほうが気持ちいいんです」
「どういう…こと?」
「わかりませんか? ほらこれ…それとこれ…違うのわかります?」
「いや…わからないよ…わからないよそんなの」
「え? そうなんですか。これ…」
他殺なんだ。
「僕も、今見てわかりました。これは自殺に見せ掛けた、殺人です」
「うそ…」
「違うのかなぁ…科学的じゃないですよね。でも僕はなんかわかるんで…」
佳彦は振り向いた。まるで幽霊を見るような目で。
「ほんと…に?」
「ええ。僕、自殺者の屍体で性欲が高ぶるの、この本で初めて知ったんで。でもこの写真は僕そこまでそそらなかったんです。僕きっと、ただの屍体は性欲の対象じゃないのかも…」
「なんで…なんでわかるの…そんなことなんでわかるの…!」
「え? なんででしょう? それにこれ…多分、快楽殺人だと思います」
彼の動きが止まった。