いつか本当の自分に出逢うまで
「ありがとうレイラ。彼によろしくね」
明るい声だして電話を切った。後から胸に込み上げてくる虚しさ。親友の朗報を聞いたばかりなのに、心は何故かすごく重い。
「あーあ、いいなぁレイラは…」
思わず出た一言。自分の今の状況と比べるから、余計でも羨ましくなる。
テーブルの上に置いてる彼の写真。毎日眺めても飽きなくらい好きなのに、会える時間はごくわずか。
「こんなの会ったうちに入らないよ。ダイさん…」
先週、仕事の打ち合わせで会った時も、三十分がいいトコだった。
「ごめん、次の打ち合わせがあるから」
申し訳なさそうな顔されると、こっちはダメとも言えやしない。
「また埋め合わせするから」
その台詞、何度言ってるかわかってる ⁈ 相当回数聞かされてるよ。
「ねぇ、埋め合わせって、いつしてくれるの?」
写真に問いかけ。本人には、とても言えないから。
付き合始めて三ヶ月経った彼と、仕事抜きで会えたのは数回。そのうち朝から晩まで一緒だったのなんて、何度あった⁉︎
「これで私達、付き合ってるって言えるのかな…」
正直そういうレベルなんだ。今だに。
「一緒に住んじぇば?」
レイラのあっけらかんとした言葉の通り、今の状況がずっと続くなら、いっそその方がいいと思うことはある。
仕事が忙し過ぎる彼の体も心配だし、何より自分の心が砂漠状態。
あの日、胸を弾ませてドアを開けたのが、まるで幻のような毎日に、実はもう、うんざりしてるんだ。
「一度ハッキリ言いなよ。仕事と私、どっちが大事なの ⁉︎ って」
レイラに言われるまでもなく、何度も口から飛び出しかけた。
「置いてかないで。仕事より私を優先して!」
大和撫子なんてどうでもいい。私は現代を生きているんだから。
「現代女性でも、三歩下がって男性の影を踏まずですよ」
学生時代、散々聞かされてきた言葉。青葉女子時代の私に一目惚れした彼が求めているのも、きっとそんな姿に違いない。
「ダイさんは何も知らないから…」
清楚も可憐も無縁な庶民派生まれの庶民派育ちで、子供の頃から青葉の大和撫子教育なるものを、叩き込まれてきただけの人なんだってこと。
「ホントの私はワガママで頑固で意地っ張りで、とことんマイペースなのに…」
本音を言うと彼に嫌われる気がして、自分にブレーキかけてしまってる。
男性との付き合い方もよく知らないから、二の足を踏んでしまってるだけ。
「きっとこんな事、一生続けていられないよね…」
いつかは心を割って話し合わないといけない時が来る。でも、そのタイミングが掴めないまま、虚しく時間だけが過ぎて行く。
迷ってばかりいる今の私は、あの小説の主人公と同じだ。
………新しい扉を開くカギも見つからず、ぬかるんだ道を歩く日々。重苦しいままの心は息もできず、葛藤ばかりを繰り返している。
もう少し楽に、もう少し自分らしく、そう願っているだけで、何も変えようとしないのは、自分に勇気がないだけだという事を、後になって思い知る。でもその時はすでに遅く、彼の気持ちは見えない所に行ってしまった後………
明るい声だして電話を切った。後から胸に込み上げてくる虚しさ。親友の朗報を聞いたばかりなのに、心は何故かすごく重い。
「あーあ、いいなぁレイラは…」
思わず出た一言。自分の今の状況と比べるから、余計でも羨ましくなる。
テーブルの上に置いてる彼の写真。毎日眺めても飽きなくらい好きなのに、会える時間はごくわずか。
「こんなの会ったうちに入らないよ。ダイさん…」
先週、仕事の打ち合わせで会った時も、三十分がいいトコだった。
「ごめん、次の打ち合わせがあるから」
申し訳なさそうな顔されると、こっちはダメとも言えやしない。
「また埋め合わせするから」
その台詞、何度言ってるかわかってる ⁈ 相当回数聞かされてるよ。
「ねぇ、埋め合わせって、いつしてくれるの?」
写真に問いかけ。本人には、とても言えないから。
付き合始めて三ヶ月経った彼と、仕事抜きで会えたのは数回。そのうち朝から晩まで一緒だったのなんて、何度あった⁉︎
「これで私達、付き合ってるって言えるのかな…」
正直そういうレベルなんだ。今だに。
「一緒に住んじぇば?」
レイラのあっけらかんとした言葉の通り、今の状況がずっと続くなら、いっそその方がいいと思うことはある。
仕事が忙し過ぎる彼の体も心配だし、何より自分の心が砂漠状態。
あの日、胸を弾ませてドアを開けたのが、まるで幻のような毎日に、実はもう、うんざりしてるんだ。
「一度ハッキリ言いなよ。仕事と私、どっちが大事なの ⁉︎ って」
レイラに言われるまでもなく、何度も口から飛び出しかけた。
「置いてかないで。仕事より私を優先して!」
大和撫子なんてどうでもいい。私は現代を生きているんだから。
「現代女性でも、三歩下がって男性の影を踏まずですよ」
学生時代、散々聞かされてきた言葉。青葉女子時代の私に一目惚れした彼が求めているのも、きっとそんな姿に違いない。
「ダイさんは何も知らないから…」
清楚も可憐も無縁な庶民派生まれの庶民派育ちで、子供の頃から青葉の大和撫子教育なるものを、叩き込まれてきただけの人なんだってこと。
「ホントの私はワガママで頑固で意地っ張りで、とことんマイペースなのに…」
本音を言うと彼に嫌われる気がして、自分にブレーキかけてしまってる。
男性との付き合い方もよく知らないから、二の足を踏んでしまってるだけ。
「きっとこんな事、一生続けていられないよね…」
いつかは心を割って話し合わないといけない時が来る。でも、そのタイミングが掴めないまま、虚しく時間だけが過ぎて行く。
迷ってばかりいる今の私は、あの小説の主人公と同じだ。
………新しい扉を開くカギも見つからず、ぬかるんだ道を歩く日々。重苦しいままの心は息もできず、葛藤ばかりを繰り返している。
もう少し楽に、もう少し自分らしく、そう願っているだけで、何も変えようとしないのは、自分に勇気がないだけだという事を、後になって思い知る。でもその時はすでに遅く、彼の気持ちは見えない所に行ってしまった後………