いつか本当の自分に出逢うまで
二人の恋
待ち合わせのカフェに着くと、そこは川沿いの席がオープンテラスになっていた。
「素敵なお店…」
今までこんな場所で打ち合わせした事なかったから、ちょっとビックリ。それで、急に心配になってきた。
(こんなお店で待ち合わせって事は、これってやっぱり感覚的にはデートなの…?)
「やだ、ならもっとマシな格好すれば良かった。せめてスカート履くとかして…」
後悔先に立たず。私がテラス席に案内されて間もなく、三浦さんが来てしまった。
「すみません、待たせてしまって…」
少し息を切らしてる彼を見て、私はホッと息をついた。
「良かった…」
思わず本音が飛び出して、慌てて口を隠した。
「何ですか?良かったって」
三浦さんは丸テーブルの向かい側の席に手をかけるのを止め、右隣の席に座った。
これまで向かい側の席に座っていた彼との距離が急に縮まり、じっと見つめてしまった。
「あっ…すみません、少しでも近づきたくて」
視線に気づいた彼が照れたように笑う。その笑顔に、胸がキュン…となった。
「ところで、今の良かったって何の事?」
顔を近づけてくる彼の態度にドキドキした。
「ごめんなさい、服装の事なんです。私、何を着て来ればいいかわからなくて、迷って結局いつも通りの格好でここへ来たら、とても素敵なお店だったので、もっとマシな…せめてスカートくらい履いてくれば良かったかなって思ってて。そしたら…」
「僕がいつも通り、ジーンズとTシャツで来たと…」
「はい。だから安心してつい」
二人して微笑み合った。
付き合うことになったと言っても、今まで通りとあまり変わらない三浦さんの雰囲気に緊張が解けた。
「実は僕も、こんな洒落た店だと思わなくて、しまったと思ってたんです。社の女子社員に何処かいい店ないかと聞いたら、ここを教えてくれて。ここならきっと、ミサトさんが気に入ると太鼓判押してくれたんで…」
「えっ…会社の方に聞いたんですか?」
驚く私の質問の意図を察するように彼が答えた。
「打ち合わせの場所としてですよ。でも…そうか。ここなら仕事以外でも使えるか…」
納得したように店内を見渡す態度に、ドキッと胸が震えた。
思わず視線をそらしてしまい、彼が慌てて言い直した。
「…いやあの、一般的に。今日はちょっと他にも仕事あるんで、そういう訳にはいかないけど…」
しまったという顔をしているけど、すぐに付け加えた。
「でも、近いうちに仕事抜きで会おうよ。その時はお互い、もっとマシな服装で。僕も見たいから。美里さんのスカート姿ってやつ」
ハハハ…と照れ笑いしてる彼は、多分気づいてないと思うけど、私はもうさっきから胸がドキドキ鳴りっぱなしで、苦しくて仕方ない。
なんとかしたくて、急いで原稿を手渡した。
「これ、書いてきました!」
受け取り、その場で読み始める。いつもように淡々と読み終えた彼は、こうコメントしてくれた。
「いいと思います。今までにない感じのミサトさんが伺えて。恋愛に対する疑問や戸惑いも、同年代の女性に伝わる内容だと思うし。ただ…」
(ただ…?)
「何か変なトコありました?」
引っかかっていたラストがいけなかったのかもと気になった。でも、彼の口は違う事を言った。
「僕との関係が、まだ恋の始まりにも至ってない事が悔しいです。僕は何年も前から美里さんに恋しているのに…」
拗ねたような表情で私を見る。キュッと胸が締め付けられたようになり、より一層苦しくなった。
テーブルの下に置いている手が微かに震えてくる。三浦さんからも目が離せない。
これは、いくら経験のない私でも、さすがにハッキリと認識できる。
(私…三浦さんに恋してる……)
認めた瞬間、カーッと身体中が熱くなった。
顔を覆いたくなってテーブルの上に手を上げたら、ぎゅっと両手で握られた。
「隠さないで。美里さんの顔、今最高に可愛いから」
「………」
ますます動機が激しくなって、胸が苦しくたまらない。握られた手から三浦さんの体温も感じて、どうしていいかわからない…。
「えっ⁈ どうしたの⁈ 」
思わず、テーブルに顔伏せてしまった。
「大丈夫?気分でも悪い?」
慌てる彼の言葉に、伏せたまま首を横に振った。それから、小さな声で呟いた。
「さっきから…胸が苦しくて…」
「えっ‼︎ 」
ギョッとする彼に大丈夫…と小さく言った。
「この苦しみは……」
(心配かけちゃいけない。キチンと、伝えなきゃ…)
そっと顔を上げて彼の顔を確認する。それからやっぱり目を見れなくて、視線を外した。
「恋…だと思うんです。私…三浦さんに……」
一瞬、彼が無言になってしまった。すっかり呆れられてしまったと思う私の耳元に、優しい声が響いた。
「今言ってくれた言葉、一生忘れません…」
………何気なく言った言葉も、人によって取り方は違う。
ただこの時は、少なくとも彼に、私の思いの全てが伝わったと信じたい。
そうでなければ、これから先、どうやって生きていけばいいのか、わからない………
「素敵なお店…」
今までこんな場所で打ち合わせした事なかったから、ちょっとビックリ。それで、急に心配になってきた。
(こんなお店で待ち合わせって事は、これってやっぱり感覚的にはデートなの…?)
「やだ、ならもっとマシな格好すれば良かった。せめてスカート履くとかして…」
後悔先に立たず。私がテラス席に案内されて間もなく、三浦さんが来てしまった。
「すみません、待たせてしまって…」
少し息を切らしてる彼を見て、私はホッと息をついた。
「良かった…」
思わず本音が飛び出して、慌てて口を隠した。
「何ですか?良かったって」
三浦さんは丸テーブルの向かい側の席に手をかけるのを止め、右隣の席に座った。
これまで向かい側の席に座っていた彼との距離が急に縮まり、じっと見つめてしまった。
「あっ…すみません、少しでも近づきたくて」
視線に気づいた彼が照れたように笑う。その笑顔に、胸がキュン…となった。
「ところで、今の良かったって何の事?」
顔を近づけてくる彼の態度にドキドキした。
「ごめんなさい、服装の事なんです。私、何を着て来ればいいかわからなくて、迷って結局いつも通りの格好でここへ来たら、とても素敵なお店だったので、もっとマシな…せめてスカートくらい履いてくれば良かったかなって思ってて。そしたら…」
「僕がいつも通り、ジーンズとTシャツで来たと…」
「はい。だから安心してつい」
二人して微笑み合った。
付き合うことになったと言っても、今まで通りとあまり変わらない三浦さんの雰囲気に緊張が解けた。
「実は僕も、こんな洒落た店だと思わなくて、しまったと思ってたんです。社の女子社員に何処かいい店ないかと聞いたら、ここを教えてくれて。ここならきっと、ミサトさんが気に入ると太鼓判押してくれたんで…」
「えっ…会社の方に聞いたんですか?」
驚く私の質問の意図を察するように彼が答えた。
「打ち合わせの場所としてですよ。でも…そうか。ここなら仕事以外でも使えるか…」
納得したように店内を見渡す態度に、ドキッと胸が震えた。
思わず視線をそらしてしまい、彼が慌てて言い直した。
「…いやあの、一般的に。今日はちょっと他にも仕事あるんで、そういう訳にはいかないけど…」
しまったという顔をしているけど、すぐに付け加えた。
「でも、近いうちに仕事抜きで会おうよ。その時はお互い、もっとマシな服装で。僕も見たいから。美里さんのスカート姿ってやつ」
ハハハ…と照れ笑いしてる彼は、多分気づいてないと思うけど、私はもうさっきから胸がドキドキ鳴りっぱなしで、苦しくて仕方ない。
なんとかしたくて、急いで原稿を手渡した。
「これ、書いてきました!」
受け取り、その場で読み始める。いつもように淡々と読み終えた彼は、こうコメントしてくれた。
「いいと思います。今までにない感じのミサトさんが伺えて。恋愛に対する疑問や戸惑いも、同年代の女性に伝わる内容だと思うし。ただ…」
(ただ…?)
「何か変なトコありました?」
引っかかっていたラストがいけなかったのかもと気になった。でも、彼の口は違う事を言った。
「僕との関係が、まだ恋の始まりにも至ってない事が悔しいです。僕は何年も前から美里さんに恋しているのに…」
拗ねたような表情で私を見る。キュッと胸が締め付けられたようになり、より一層苦しくなった。
テーブルの下に置いている手が微かに震えてくる。三浦さんからも目が離せない。
これは、いくら経験のない私でも、さすがにハッキリと認識できる。
(私…三浦さんに恋してる……)
認めた瞬間、カーッと身体中が熱くなった。
顔を覆いたくなってテーブルの上に手を上げたら、ぎゅっと両手で握られた。
「隠さないで。美里さんの顔、今最高に可愛いから」
「………」
ますます動機が激しくなって、胸が苦しくたまらない。握られた手から三浦さんの体温も感じて、どうしていいかわからない…。
「えっ⁈ どうしたの⁈ 」
思わず、テーブルに顔伏せてしまった。
「大丈夫?気分でも悪い?」
慌てる彼の言葉に、伏せたまま首を横に振った。それから、小さな声で呟いた。
「さっきから…胸が苦しくて…」
「えっ‼︎ 」
ギョッとする彼に大丈夫…と小さく言った。
「この苦しみは……」
(心配かけちゃいけない。キチンと、伝えなきゃ…)
そっと顔を上げて彼の顔を確認する。それからやっぱり目を見れなくて、視線を外した。
「恋…だと思うんです。私…三浦さんに……」
一瞬、彼が無言になってしまった。すっかり呆れられてしまったと思う私の耳元に、優しい声が響いた。
「今言ってくれた言葉、一生忘れません…」
………何気なく言った言葉も、人によって取り方は違う。
ただこの時は、少なくとも彼に、私の思いの全てが伝わったと信じたい。
そうでなければ、これから先、どうやって生きていけばいいのか、わからない………