アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 マフラーをしっかり巻いてコートの襟を立てた。

エアコンて暖められた室内と違って、玄関は寒々としていた。

足元からジンジン冷えて、思わず身震いをした。
ポケットから手袋を出し、小さな手にはめた。

そっと頬刷りをする。

柔らかなモヘヤが心地良かった。


これから始まる《キャンドルツリー》がどんなものなのかも知らない。

でもそのネーミングだけで私は酔っていた。


「ねぇお母さん。どうせお父さんは遅いんだから行っちゃおうよ」
私は母を誘った。

でも母は父を待つと言う。


「そんな事言っていたら終わっちゃうよ」
私は玄関の中で、母の心変わりを待っていた。




 その時。
いきなり玄関が開いた。


(――えっ!?)
私は一瞬棒立ちになった。


ビックとした。

父が……
珍しく父が早く帰って来たのだった。


母に嫌がらせをするためだった。
私が……
《キャンドルツリーイベント》
のことを何時も言っていたからだった。


「テメエ等は又、俺の目を盗んでコソコソと!! おい、解っているのか。早く飯にしろ!」

慌ててキッチンに向かった母に暴言を浴びせる。
そのためだけに早く帰って来たのだった。




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