アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 父の仕事は営業だ。
イヤなことがあっても我慢する。

下げたくない頭も下げなくてはいけない。


母とのお見合いだって、付き合いだったはずだ。


まさか本当に結婚するなんて思いもしなかったことだったろう。


だから自分の親にも縁談話をしていなかったのだ。


でもそのせいで……
お見合いをしてから親に言ったら叱られ、母親が挨拶に来ることになった。

当日仲人が突然介入して来て、その日の内に結婚式の日取りや式場まで決めてしまったのだった。




 あれよあれよと言う間に乗せられて、結婚する気もない母と結婚させられる羽目になった。
辛いのは判る。

でも……
だからって……
母にあたらなくてもいいだろう。

私は母に罵声を浴びせる父の声を聞きながら玄関を開けた。




 確かに父の帰りを待っていた。

それは……
会社が終わってすぐ帰って来ると、お酒を呑んでからでも遅くないからだった。

ごくまれに定時で帰る日もあったので期待していたのだった。


でも今日のは違う。
母を馬鹿にするために、完全に仕組んだことだと思った。

そう言う時の時間配布は完璧な人だったから。


食事の後片付けの済んだ母を、イベント会場へ行かせなくするためだけにこの時間帯を狙ったのだった。




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