アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「嘘つけ!」
警備員の声に私は震えた。


「そんな親何処にいる!」
警備員は私の前に立ちはだかった。


「お願いします。今ならまだ舞台に間に合います!」

私は必死に訴えた。
でも……
聞く耳さえ持っていないらしくて、私は通せんぼされたままだった。


私の身柄は不審者として拘束されることになるようだ。

警備員の電話応答からそう判断した私は、自転車を其処に横倒しにして逃げ出した。


もう嫌になったいた。

説明することも、説得させることも……


それならいっそのことあの建物の中に入って先生方に救いを求めよう。

そう思った。


だってその先に私の目指した市営のホールはあるのだから。




 振り返ると警備員が凄い形相で追い掛けて来る。


「誰かー!! お願い誰か助けてー!!」

私は必死にホールに向かって叫んだ。


深い雪に足が取られる。

体が揺れる。


それでも逃げた。
一生懸命逃げた。


でも遂に……
前のめりになり、頭から雪に突っ込む。

そして又……
取り押さえられた。


私はもうボロボロになっていた。
逃げ出す気力もないほどに……

私は又覚悟を決めた。




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