アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 「でも佐々木、物凄く綺麗だ……」

見ると、水野先生も泣いてくれていた。


「佐々木。メチャクチャきれいだ。こんな可愛い娘をお父さんは……」

遂に水野先生は声を上げて泣き出した。

それに吊られて私も泣き出した。




 子供の頃、父の暴力に泣き叫んだ。
あの時と同じように、声が引きつる。
警備員など目に入らなかった。

私は水野先生の前で泣きじゃくっていた。




 まだホールのではクリスマス会が続行中だった。

でも学校とは直接関係のない水野先生は、私の担任に断ってから近くの喫茶店に誘ってくれた。

私の余りにも酷い姿を見た担任は、それを許可してくれた。

ガタガタと震えて、今にも倒れそうだったのだ。

水野先生に甘えるためではない。
自分でも抑えられない言いようのない安心感で、張り詰めた糸がプツンと切れのだった。




 結局私は、ホールの中には入ることが出来なかった。


でもそれが本当は良かったのだった。
水野先生のファンの先輩方に妬まれなかったから。




 門を出る時私は警備員をお返しに睨み付けてやった。

警備員は頭を掻いていた。


悪いのは私でもなければ、警備員でもない。
全ての元凶は車で送ってくれなかった父なのだ。




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