アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
 薪ストーブがガンガン焚かれた喫茶店。


「ん、懐かしい。ニッキの香り」

店内に入った途端、水野先生が言った。


マスターに許可を貰ってから、水野先生は椅子を薪ストーブの前に運んで来てくれた。


早速あたらせてもらった。

でも……
余りにも体が凍え過ぎて、肌に暖かさが伝わらない。

それどころか、体の芯がドンドン寒くなった。

暫くそのままでいると、じんわりとむず痒くなった。

血管と言うか、神経と言うか……
指の先が呼吸を始めたかのように蠢く。

ジンジンと感じる。
まるで水野先生への恋心が乗り移ったかのように……

でもその途端に指先が熱くなる。

熱を持って痛くなる。
私は慌てて指を引っ込めた。

余りにストーブに近付き過ぎていたからだった。


それでも其処に……
水野先生と一緒に其処にいた。


そして徐々に温まっていった。

なのに、今度は歯がガチガチと鳴りだした。

どうやら安心したために、反動で出たらしい。


そして何故だか顔だけ火照った。

水野先生が傍にいるからだけでもなかった。

本当はそのことが一番嬉しかったのだけど。




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